マッドネス不覚のサード:『7』を駆け足でレヴュー


'7' Madness
『7』 マッドネス


冬が来〜ればマッドネす〜♪とばかりにファーストとセカンドを冬の間にレヴューしてきたこのブログ、おそらくは今回を限りに、冬のマッドネス・アルバム・レヴューはお終い、となる。だが、心配ご無用。フォース『ザ・ライズ&フォール』はどちらかと言えば秋イメージのため、結果的・予告的にそうなるというだけの話。本当なら、それほど気に入っていないアルバムまでわざわざレヴューしない、で済むところのはずだが、当時の日本でのテンポラルな間違った評価をいまさらながらでも覆し新世代・次世代の音楽好きにまともなマッドネス評価を渡していくというのは私が私自身に勝手に課したタスクなので、足早にでもこなしておきたいのだ。



ファーストからセカンドへ、"スカ・バンド" から汎リズム&ブルーズ色濃くずいぶんな飛躍を遂げたマッドネスは、このサード『7』では少しく停滞・低調を見せる。セカンドからこのサードへの間隔はたっぷり1年はあるため、たとえ人気に伴う忙しさのせいだったとしても、その楽曲群の貧相さをスランプや時間不足に求めるのは無理があるだろう。クレジットからはキーボードのマイク・バーソンの独り舞台が多分に窺われ、彼の作曲術の幅(の限界)がそのままこのアルバムの否定しがたい単調さとどうってことない埋め草曲の由来となっている、と言ってもあながちイジワルすぎとはならないだろう。
もちろん、ファーストからセカンドへの進化/深化に見えるとおり、このサードでもまた、音楽・歌詞両面でのよりシリアスなアプローチが見られるのであり、それが「楽しく聴ける」「ハッピーな」「グルーヴの充実した」バンド/アルバムという面を残念ながら強く損なっていて、それゆえもったいなくも必然的に「マッドネス一生の不覚アルバム」が生まれた、というふうにも言えるだろう。以降の4、5、6枚目のアルバムでも多い少ないの差はあれ見られる、イングランド特有のグルーミネスのアートという面が一方的に強く出た感が大きく、その割には、というかその対比から、「おふざけポップ」や「珠玉の泣かせ曲」や「グルーヴ勝負」がアルバムのカラーをバランスよく整えるのには不十分、となっている。



と、歯切れの悪い前置きを苦々しくも放ったところで、個人的にひっかかりを感じない曲は容赦なくすっ飛ばし、いささか駆け足のレヴューといこう。

A-1. Cardiac Arrest
ヴォーカルのチャスとギターのフォアマンの曲。
日本盤オンリーのホンダ車のCM曲「In The City」とは正反対に異なり、A面1曲目からまさかのグルーミー・チューン。ザ・キンクス譲りの、平凡な小市民の日常感覚を皮肉と同情たっぷりに描くオハコ。音楽的には不思議で独特なプログレッシヴ風味が香り、ユーモラスだとかおどけてるだとかの表現ではもはや包括しがたいマッドネスの、苦々しさをも含むヘヴィなヒューマニズム/モダニズムが頭っからのぞく佳曲。

A-2. Shut Up
ヴォーカルのサッグス(マクファーソン)とフォアマンの曲。
1曲目を受けてまたも不穏なムードを漂わす、ヴァースとコーラスが二重人格的な不協和を醸し出す異能チューン。バハマはナッソーのコンパス・ポイント・スタジオ録音ということからも、このアルバム期のマッドネスに、ダブの持つグルーミー&プログレッシヴ志向が色濃かったとは想像できるが、フォアマンのリヴァーヴ/ディレイを効かせた重く低いギターの音色にもその傾向が感じられる。どうしても目立つウワモノ:サックスとピアノ/オルガンが幅を利かせがちなマッドネスのバンド・サウンドだが、以降のアルバムの泣かす名曲群にあってもこのフォアマンのギター遣いは常にムードの下支えとなっており、不調低調の誹りを免れないとしてもやはりこのサードにも不可視の前進がちゃんとあるのだ。

A-4. Missing You
マクファーソンとバーソンの曲。
ディープ・パープルの「Hush」とザ・シャーラタンズの「The Only One I Know」を繋ぐミッシング・リンクかと想わせる、グルーヴィーなベース/キーボードのリフを骨格とするクールな異色ダーク・ロックンロール。後のいわゆる「マンチェスター・ビート」を全く別の鉱脈から先取りしたようなシャッフリング16ビートがマッドネス/ダニエル・ウッドゲイトのリズム認識巧者っぷりスリル・メイカーっぷりをさりげなくも雄弁に誇示している。

A-6. Tomorrow's Dream
サックスのトンプソンとバーソンの曲。
三たび不穏で陰鬱な、ダビーでプログレッシブでトランス感あふれるオルタナティヴ・ポップ。不安と焦燥を煽る太く重く暗いベース・ラインを軸にウワモノ群がSE的プレイでサイケデリックに飛び回る、気持ち悪いはずなのにクセになるトランス快感の異色ポップネス。アンディ・パートリッジのオハコにも似た多音節フラットな息の長いメロディーのブリッジにマッドネスらしからぬ(?)ダークなかっこよさが凝縮しており、救いなきムードのままB面頭の「Grey Day」に真っ逆さまに続くのだった。


 


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