リーフ「Good Feeling」— パワー・ポップの魔術師#16


"Good Feeling" Reef
「グッド・フィーリング」 リーフ


「それを『パワー・ポップ』と呼んじゃうのは無理があるだろ!」「なんでもかんでも『パワー・ポップ』と言ってんじゃねーぞ!そんなこと言ったら、たとえばシンディ・ローパーだってパワー・ポップってことになるんちゃうんかい?」みたいな言辞をたとえ招くことになろうとも、あくまでパワー・ポップと呼びたくなる音楽がある。未知なるパワー・ポップの熱心な渉猟者であればあるほど、「自分にとってはこれはパワー・ポップ」という曲がたくさんあることだろう。パワー・ポップはそもそも特定のジャンル/サブ・ジャンルではないからだし、それぞれのパワー・ポッパーにそれぞれの好みバイアスがあるからだし、それぞれの人のパワー・ポップ観自体が変化し進化し深化し拡張していくものだからだ。



たとえばザ・ナックの「My Sharona」をパワー・ポップと認めないというパワー・ポッパーは少なかろう。だが、アージ・オーヴァーキルの「Sister Havana」だったら?ジェットの「Are You Gonna Be My Girl」なら?ザ・ラーズの「There She Goes」は?明るい/暗い、速い/遅い、ギターが効いてる/効いてない、コード感がポップ寄りである/ブルーズ寄りである、etc、etc... パワー・ポップであるか否かは、そう単純素朴に一意的に決まるものではない。パワー・ポップに仕える者はパワー・ポップだけに仕えてはならない。あらゆるジャンルにパワー・ポップはあり、あなたの発見・遭遇を待っている。



大枠・パッと見ではブルーズ・ロック/ハード・ロックの最新解釈型に捉えられがちだったリーフというバンドは、『ビートU.K.』だったかあるいは本国そのまんまのオリジナル『ザ・ワード』そのものだったか、いずれにせよフジテレビ深夜の番組で初めて観た時から、私にとってはニルヴァーナやアージ・オーヴァーキルやファイヴ・サーティーのそう遠くないが似てもいない従兄弟だった。その必殺の1曲「Good Feeling」は、明らかにロックンロールの最新型解釈であり、しかも自覚的に不機嫌で退屈し切った利かん坊たちの、当時の現行ロックへの異議申し立て・挑戦状だった。パンク/NWの端正で直線的なビート感を払いのけ、ザ・ビートルズ直系のポップ・マエストロの実験道を払いのけ、マンチェスター・シャッフリング16ビートを払いのけ、ブラック・ミュージック再解釈のファンク・ソウル求道熟練を払いのけ、国民的アンセム的感動名曲志向を払いのけていると... 他には何も残っていないか?リーフは、利かん坊の若ガキ特有の気概とロックンロールへの反射神経と蓄積伝統のコアを鋭くつかむ音楽的エリート・アスリート能力で、'60年代から'90年代の英米ロックの多くの美徳を軽々と包括し自家薬籠中のものとしてみせる。



イントロの唸りシャウトはレッド・ツェペリンかフリーか、はたまたスティーヴ・マリオットかシャノン・フーンか、意外やスライ・ストーンかもしれないぞ?ジャキンジャキンの乾いたストラトキャスター系ギター音に隠れるファンキーなワウ音を聴き逃すな。細かくもしなやかに柔らかいハイ・ハットのジャジーさをいきなり自ら断ち切るラウドにストレートなスネアのフィル・インと重く粘り腰に下支えを受け持つバス・ドラム。ノートも隠して土中に潜みドクドクと鼓動しつつ爆発のタイミングを待つベース。ファースト・コーラスの雪崩のような爆音の洪水でロックの原初的カタルシスを放つまでに、既にブルーズがロックがソウルがブルーズ・ロックがファンクがスワンプ・ロックがNWがレゲエが、そしておそらくはザ・ストーン・ローズィズのレニのドラミングのエッセンスが、豊かな調味料戸棚から使い放題のほんの隠し味よろしく易々と提示されている。
パワフルに痛快に2コーラスを終えると、ファンキーにサイケデリックにトランスィーに引き伸ばされるミドル・エイトが、レッド・ツェペリンというよりはリトル・スティーヴィー・ワンダーの「Fingertips part 2」やスモール・フェイスィズの「Come On Children」を想わせる引き感たっぷりに聴く者を煽る。そして狂躁のラスト・コーラスではあらゆるやんちゃと無茶のオール・ジャンル超絶プレイのつるべ打ちで、しかもしれっと素早く幕を引くのだ。



ロックの複合し錯綜するありとあるかっこよさとポップネスをエッセンシャルに総括し、しかもそれを原初的衝動パワー任せにあたりまえのように身体性豊かに炸裂させる。新人バンドにのみ贔屓よろしく許されるコロンブスの卵ライクな発見の歓びの無垢な表出と、老獪な手練れヴェテランのような抜かりのない精密アンサンブル。半端でないグルーヴ発明中毒者っぷりをより深く広く見せつけるアルバム『リプルニッシュ』の中にあってもそうでなくとも光る、この「Good Feeling」のパワーとポップネスはパワー・ポップの永久殿堂入りに相応しい格別の輝きを持っている。






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