完成度高きサイド3、XTC『オレンジズ&レモンズ』レヴュー その4


'Oranges & Lemons' XTC
『オレンジズ&レモンズ』 XTC 


少しく長く続けすぎて軽く後悔していなくもないが、『オレンジズ&レモンズ』のレヴュー、懲りずにサイド3から続けよう。



前回のサイド2のレヴューでも触れたように、『イングリッシュ・セトルメント』以来の2度目の2枚組アルバムである『オレンジズ&レモンズ』にも、曲のクオリティの上下の揃えは言うに及ばず、テーマや音楽スタイルやそこからの連想含んでの流れが中途で分断されることでリスニング上の満足度が減殺されるという、リスナー側の贅沢な要求からするとイマイチな面がなくもない。敢えて言うなら『セトルメント』のサイド3に似た傾向が『オレンジズ』ではサイド2、そしてなんならサイド4にも出てると言わざるを得ない。



その点で、サイド3は曲が粒揃いな上に流れも見事にまとまっていて整合感があり、たった3曲でもう終わり!?ってとこを除けば満足感の高いサイドとなっている。似てこそいないが『セトルメント』のサイド2に共通する感触がある。

3-1. Merely A Man
『オレンジズ&レモンズ』に「アナログ2枚組感」が強く感じられるのは、4面ともに頭の1曲目がパワフルでラウドな、伝家の宝刀にして正常進化な、しかもかつてないほどにオプティミスティックな炎で輝くパートリッジ節の名曲で始まっているゆえでもある。この「Merely A Man」もまたアンディの人間中心主義・主知主義型の善と愛への志向を高らかに謳い、「Garden of Earthly Delights」「Mayor of Simpleton」「The Loving」とも、また過去の「Beating Of Hearts」とも呼応して響き合う、善性の勝利の凱歌とも言うべき威風堂々たる傑作となっている。
ポジティヴでハッピーな歌詞の到達点に並んで、ロック・バンドXTCのハード&へヴィなサウンド/プレイも頂点を極めており、巨大な重機がガシンガシンと突き進むような音像の高圧は「No Thugs In Our House」以来の強力さだ。口数多く息の長いアンディ節メロディの炸裂カタルシスも聴きもの。

3-2. Cynical Days
一転してそのオプティミズムの炎に冷や水をぶっかけるように、コリンのペシミスティックにもソウルフルな「Cynical Days」が続く。「一転して」と言いつつ、私はその流れにこそむしろ舌を巻く。
歌のフレージングにせよ何らかの楽器による「リフ」にせよ、コリン・ムールディングの曲は単純素朴なリフレインの積み重ねで作られていることが多く、アルバムでは得てして多作家のアンディの曲群の合間の「埋め草」程度になってしまっていることも否定し難い。が、このアルバムではサイド2の「One Of The Millions」と並んで、15曲中僅か3曲に留まるコリン曲が大事なカウンター/共起モチーフとして機能しており、アルバムの聴き応え増に貢献している。
いぶし銀に唸り歌うベース、珍しくエモーショナルに声を張るコリンのヴォーカルに、意外なゲスト:マーク・アイシャムのトランペットと、大人味だがヌルくないXTC新味。

3-3. Across This Antheap
そのアイシャムのトランペットで繋げられるようにジャズィ—にムーディーなひっかけで始まる「Across This Antheap」にも、また『セトルメント』の架空エスニック風味が色濃く香るが、ずっと入魂で円熟の作になっている。スワンピーでアメリカーノな奇矯さにグルーヴ大食漢アンディの久方ぶりの実験屋の興奮が感じられるとともに、それを生半可で非ユニヴァーサルな遊戯曲に留めておかない気概がこめられ、異色作ながらもこのアルバムの大きな収穫のひとつとなっている。
前期の大きな代表的傑作として挙げられることも多い「Living Through Another Cuba」を想わせるアンディの無手勝流ラッピング・ヴォーカルの勢いで走り切ると思いきや、黙示的に荘厳にズーム・アウトしていくようなエンディングに成熟した父親としてのアンディの姿が見え、それがサイド4に繋がっていく。


 


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