ウィングズ「Getting Closer」 — パワー・ポップの魔術師#18


“Getting Closer” Wings
「ゲッティング・クローサー」 ウィングズ


ザ・ビートルズというバンドは、パワーにおいてもポップ・センスにおいてもどこにも引けを取らないバンドであるはずだが、意外や、ことパワー・ポップに限ってみると、これぞと1発で浮かんでくる曲は実は少ないくらいなことに気付く。それはひとつには、ザ・ビートルズがあまりにも優秀で多才なバンドであるため、とあるパワー・ポップ素案をたかだか1曲のパワー・ポップとして仕上げてしまえば足れりとするのが逆に困難であるから、なのかもしれない。アルバム/時期で言えば、私は中期の『ラバー・ソウル』『リヴォルヴァー』を至高とする者なのだが、さてその「ベスト」と目せる時期に、似つかわしい最良のパワー・ポップはあるかしらんと思い浮かべてみようとすれば、自分を厳しく律して「なんでもかんでも」を排するなら「Drive My Car」「And Your Bird Can Sing」あたりのみに絞られてしまう。いや、もっと正直、もしくは誠実に言うとしたら、「Drive My Car」はあまりに斬新で高度なプログレッシヴ・ミニマル・ファンクンロールなので外しておかねばならないと考え直してしまうくらいなのだ。比較的「パワー・ポップ」のイメージにふさわしい「And Your Bird Can Sing」にしたって、独創的なアイディアが隠し味的に巧緻に仕込まれすぎている。けっして逆説的なヒネった悪口を言いたいわけではなく、この辺のザ・ビートルズが1曲にこめるヴィジョンとタスクがあまりに豊穣かつ先鋭的なのを褒めたいのだ。パワー・ポップの魔術を生むのは往々にして、もっとやさぐれた気紛れな直感型天才への気紛れな天佑だったりする。



天才と素養と好奇心と探究心と技能と完成度へのこだわりに満ちた不世出のポップ・ミュージシャン:ポール・マッカートニーは、大芸術家といたずらっ子が内に無理なく並立するそのミュージシャンシップをザ・ビートルズで存分に発揮したが、バンド崩壊までの下り坂道でのトラウマフルなまでの懊悩と傷心によってか、マッドで利かん坊なはりきりせっつき万能鬼船長としての天分をその後は抑えていた節がある。ところがパンク/NWの成功も華々しき1979年、ザ・セックス・ピストルズやザ・プリテンダーズでも実績あらたかなプロデューサー:クリス・トーマスの霊験もあってか、マッカは突如のブライト・ロックンロール・チューン:「Getting Closer」を放つ。







  


にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ  
にほんブログ村




 プライバシー ポリシー

プロファイル
eakum の音楽レヴュー
Author:eakum
スポンサード リンク






アーカイヴ

全過去記事のタイトル一覧