ジェネラル・パブリック「Tenderness」 ー ロックンロールの奇術師#6.1


“Tenderness” General Public
「テンダネス」 ジェネラル・パブリック


前エントリのザ・ビートに続けてジェネラル・パブリックを採りあげるのに「ロックンロールの奇術師#6.1」を冠してみるのは、私にとっては妥当で必然性のあることだ。西インド諸島セント・ルシアのルーツを母方に持つランキン・ロジャー以外の3人:ロジャーの相棒のデイヴ・ウェイクリング、ファイン・ヤング・カニバルズ組のアンディ・コックス&デイヴィッド・スティールは、白人でありながらコアにエンスーに汎ブラック・ミュージックに入れ込み独自のブラック・ロックンロールを幻視し続けたミュージシャンであり、その長き広きに亘る射程は「スカ・リヴァイヴァル」を超えてニッチながら独特で優良なロックに結実した。ソウルを、ブラック・ミュージックを追究するのに白人黒人の別など物の数ではないはずではあるが、この3人のいわば2トーン精神は、ザ・ビートの後にも長らく持続しふさわしい成果を上げた珍しく麗しい好例であった。



ウェイクリング&ロジャーのヴォーカル組2人が参加したマッドネスの『キープ・ムーヴィング』に先立つこと1ヶ月、’84年1月にジェネラル・パブリックはアルバム『オール・ザ・レイジ』でデビューしていた。ディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、ザ・スペシャルズの元メンバーらと元ザ・クラッシュのミック・ジョーンズを迎え、いわば地味なパンク期スーパーグループよろしく始動したジェネラル・パブリックは、政治/社会色濃いシリアスなファースト・シングル「General Public(エポニマス)」で地味に英国内チャートに入った後、続くシングル「Tenderness」で思いがけずカナダ、アメリカでトップ40ヒットを獲得する。



‘60年代ブリティッシュ・ビート・バンドの面々、ずばり言えば多かれ少なかれモッズ・バンドであった面々が「サイケデリック期」に突入しモッド・テイストから離れていって以降、「ハード」なモッズはルード・ボーイズ/スキンヘッズ/ノーザン・ソウル・シーンに分派し、そこでは労働者階級の白人若年層と西インド諸島出自の若年層から成るスカ/ロック・ステディ/レゲエ/ソウルを愛するエンスージアストの緩やかなマトリックスが形成されることとなる。セカンド・アルバムでトチ狂う前のディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズのソウル趣味、2トーンの旗頭ながらパンク色濃かったザ・スペシャルズ、ザ・クラッシュきっての音楽雑食漢ミック・ジョーンズが、ジェネラル・パブリックに結集することになるのはある意味歴史の必然でもあった。



旧き良きブラック・ロックンロールやカリビアン・ミュージックのオプティミスティックな明るさ漂い、汎ブラック風味にソウルフルでセンシュアルなヴォーカルが炸裂し、時を同じくする新生スクリッティ・ポリッティに負けず劣らずブライトなアナログ/ディジタル錬金術サウンド・プロダクションが全編に亘って煌めきまくる「Tenderness」は、’84年当時のNW流黒人音楽再構築勢の数多の成果の中でも際立って輝く傑作だ。既に「地」の段階で良くできた曲が、完全主義の学究肌ミュージシャン:デイヴ・ウェイクリングのこれでもかこれでもかの精錬アレンジで1秒の隙もないポップ満漢全席に仕立て上げられている。多彩なヴォーカル技が、ギターの1リックが、ホーンのバッキング・リフが、凝りに凝って目覚ましくオリジナリティに溢れしかもどこか懐かしい必殺の長尺ミドル・エイトが、汎ブラック・ミュージックの広大な沃野とパンク/NWの挫折と再出発と再生の濃厚な数年間を複合的・重層的に想起させる巨大なマトリックス曲の1片1片となっている。



げに恐ろしきかなポップ・ミュージック、げに恐ろしきかなワールド・ワイド・ヒット・チャート・レース。ユニヴァーサルなポップネスは時にアメリカン・チャートのお眼鏡にかかれど、コアで固有のコンテクストほどまたアメリカン・チャートの与り知るところではない。スティングやU2になりきらない限り、ブリティッシュなバンドに安泰のキャリアはなく、ジェネラル・パブリックの命運もまた、実質セカンド・アルバムを限りに尽きるのであった。





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