ロック史上の片隅にでも残すべきスローンの『トゥワイス・リムーヴド』をしっかり語っておこうか


'Twice Removed' Sloan
『トゥワイス・リムーヴド』 スローン


今回はいきなり本文に入ろう。
おそらく長文になる予感がするし。



前回のエントリで、「このバンドの魅力の根幹は、4人のソングライター、ヴォーカリスト、プレイヤーが驚くべき共存体勢の内に協力し合い、そしておそらくそれをみんなで楽しんでいる、という点にある」と書いた。曲ごとの詳解もその観点からのバイアス多めになる。意図的に4曲のレヴューは省く。曲順は'94年アメリカ版のもの。データは'94年のCDのインナー・スリーヴから。これによればスローンは曲のクレジットをバンド名義にしているが、メイン・ヴォーカルを取るメンバーをその曲の(メインの)ソングライターと考える。

現在、私の手許に物理的に存在するスローンの一次資料はこのCDだけだ。YouTube及びFacebookからメンバーの顔と名前が始めて一致したが、もしかしたら二人の(メインに)ギタリストを取り違えているかもしれない。もしそうならご一報頂ければ幸いだ。ともかく...

スローンのメンバー4人は以下のとおり。(『トゥワイス』ジャケ写左から)
パトリック・ペントランド  ギター、ヴォーカル
アンドリュー・スコット   ドラム、ギター、ヴォーカル
クリス・マーフィー     ベース、ギター、ドラム、ヴォーカル
ジェイ・ファーガソン    ギター、ベース、ヴォーカル

1. Penpals
クリスの曲。色っぽく不敵な面構えの、ちょいジム・モリスン似の実質フロントマンらしい、皮肉でちょっとセクシュアルな歌詞のパワー・ポップの佳作。アルバム1曲めにふさわしい。ザ・ジャムの「ガール・オン・ザ・フォン」を連想させる。8ビートに16のシャッフル感が入り、パーカッションでそれを補佐するのはザ・ビートルズのオハコだった。ギター・プレイは地味めながら、実直かつ小技の効いたリズムと煽りの暴君リードにピクシーズあたりのかっこよさも感じられる。

2. I Hate My Generation
ジェイの曲、か。ジェイとクリスの掛け合いヴォーカルが効いている。「ロック・バンドのメンバーであること」と「'90年代のバンドであること」への自己言及的な曲作りがスローンには多い。この曲ではそれが、不協和で奇っ怪なイントロにテレヴィジョン性、突然おセンチにビーチボーイズ/マージー・ビート性、全般にビートルズ/キンクス的なヤロウのパーティー性、と複雑怪奇かつシャレっ気のあるオルタナなのに熱いフシギな名曲として結実している。確信を持ってロックの喜びを復活させたザ・ストーン・ローズィズや、それと真逆のいわゆる「ポスト・ロック」勢、どちらにも与しないがどちらにも共通し共感するロックへの愛と学究性が感じられる。

3. People Of The Sky
アンドリューの曲。YouTubeでもしばしば触れられるが、ドラマーのアンドリュー・スコットはギターを弾きしっかり作曲をする。その時のドラマーは(少なくともライヴでは)ベーシストのクリスだ。目測195はありそうなもの静かで古典的なハンサムでもある彼は少しメンタルに問題でもあるのだろうか。'50年代的スーツを着て直立不動でギター&ヴォーカルをとる姿、ヨレたTシャツで髪を振り乱し狂ったようなオーヴァー・パワーでドラム・キットを叩く姿。4人の友情と結束と化学反応はこのドラマーの存在にいちばん表れているような気さえする。「ドラマー作の曲」として割り引いて聴く必要はまったくない。(おそらく)クリスの雑で力任せがかっこいいドラム、ギターの指板に貼り付いたようにして弾くパトリックのリード、気の抜けたパロディックなビートルライク・コーラスや「ザ・ワード」のあのパート、とヘンでかっこよくクセになる魅力が満載だ。

アルバムの最初の3曲がここまで一貫性があって粒ぞろいで入りやすいのも珍しい。しかもそれが3人のソングライターがそれぞれヴォーカルをとった結果なのだ。つかみの勢いはそのままにスローンのディープでリリカルな魅力のほうもここから顔を出し始める。

4. Coax Me
クリスの曲。いちばん「モテそう」なフロントマンの実はエモーショナルでセンチメンタルな部分が見える。パトリック(?)のバニーメン、ドゥルッティ・コラムあたりにも通じる繊細でニューロティックでヒリヒリするようなリード・ギターが活きている。

5. Bells On
クリスの曲。このアルバム、このバンドの一翼の白眉といえる傑作。ユーモラスでクスリとさせる細部を持ち、'90年代的な感覚を裏切ることなく、泣かせ、熱いバラッド。レニにも劣らないアンドリューの絶品ドラムの細かく地味に光る冴えが最高の聴きどころ。サード・ヴァースの「wear lipstick?」後のスネアひと打ちのかっこよさを聴き逃すな。

7. Worried Now
パトリックの曲。アナログ盤ならB面1曲めを飾るだろう威勢良くエモーショナルでリリカルな傑作。コーラス時のリード・ギターはパトリックかジェイか。テレヴィジョン、ロバート・クワイン的なかっこよさを結晶化したようなフレーズだ。間奏/ミドル・エイト時のしゃかりきドラムとブレイクにもスローンのロック性のかっこよさがまざまざと感じられる。

9. Deeper Than Beauty
クリスの曲、か。このバンドの特異な役割分担を感じて気にし始めるきっかけになったのがこの曲だった。ギターのコード・リフとドラムでできた小節ユニットを人力ループのように使い「曲作り」を脱構築したかのような奇妙でイカす曲。まったく関係ないがゼムの「ミスティック・アイズ」のエピソードを彷彿とさせる。

10. Snowsuit Sound
ジェイの曲。ノスタルジックでセンチメンタルな美しさとロック的激しさが同居する傑作。「タンタンタツタン」のモータウン発祥のあのロック・ビートにここまで狂ったかっこいいフィル・インをいれるアンドリュー・スコットはもっと評価されるべき。ファズ・ベースの不穏さ、切り裂くようなギター、けっして似ているわけではないがまたしてもテレヴィジョン以下の'70年代NY勢のロフト・ロックのかほりがする。ヒョロっとした童顔のギタリスト/ベーシスト:ジェイ・ファーガソンにはベックにも似た... と、それはまた別のおはなし。



とりあえず駆け足で曲別詳解をしてみたわけだが、4人のキャラをも少し語らないことにはスローンの魅力を十全に伝えることにはならない(もちろん音楽自体の魅力は音楽自体がもっとも雄弁に語るのではあるが)。しつこいようだが次回もスローン。





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