XTC『ザ・ビッグ・エクスプレス』は地味ながら愛すべき小品アルバム


'The Big Express' XTC
『ザ・ビッグ・エクスプレス』 XTC


以前にも書いたが『ザ・ビッグ・エクスプレス』は私が最初に買ったXTCのアルバムだ。少なからぬXTCファンは1st.『ホワイト・ミュージック』3rd.『ドラムズ・アンド・ワイアーズ』4th.『ブラック・シー』あたりの、言わば「初期」からXTCを好み、それゆえ5th.『イングリッシュ・セトルメント』あたりからのXTCを「丸くなった」「おとなしくなった」「スタジオ志向になった」等の理由から「それほど好きじゃない」と評することが多い、のだろう(想像で物を言ってます)。そんな「一派」から見れば、このアルバムなどはもう、箸にも棒にもかからない最もつまらないアルバム、みたいな評価になるのかもしれない。だとしても私はそこに反駁しようなどとは思わない。私がこのエントリを向けて書くのは、主に、未XTCリスナー、初心XTCリスナー、及び、「ああ、そういえば『エクスプレス』あんまり身を入れて聴いてなかったな」みたいな既存XTCファンである。



私が『エクスプレス』を買ったきっかけは特にこれというものでもなく、たまたま過去に「Ball And Chain」をラジオで聴いたことがあって、「ああ、あのバンドなら聴いてみてもいいかな」くらいのものだった。その頃の私のお気にはスクリッティ・ポリッティ、マッドネス、ザ・スタイル・カウンシル、マット・ビアンコ...と、むしろファンク、ジャズ、R&Bのイギリス的解釈をベースとするNW出自のロック/ポップだったのだが、このアルバムで出会ったXTCは私にとってザ・ジャム以来のロックらしいロック、そしてそれ以上に、正に英国の薫りを感じさせるバンド、となった。その印象は続くアルバム『スカイラーキング』で決定的に裏付けられることになる。



当時の私が感じた『ザ・ビッグ・エクスプレス』の、そしてXTCというバンドの魅力は
・ザ・ビートルズ、ザ・キンクスに通じる英国ポップ性
・エクセントリックなヴォーカリスト/ギタリスト/ソングライター/コンポーザーとしてのアンディ・パートリッジの個性と力量
・アグレッシヴなロック性からスウィートでハッピーなポップ性まで幅広い志向とその表現力を持ち、レイ・デイヴィスとジョン・レノンとポール・マッカートニーを併せ呑むポテンシャルを持つアンディ・パートリッジというミュージシャンとその鉄壁のバンドの、タスクと成果のショー・ケース
という具合のものだった。結局それはまちがってはいず、前に後ろに発表順無視で手を出していった私が「ハズレを引いて残念がる」ようなことはほとんどなく、そうして私は言わば「後追いの新参ながら熱心でワカってるXTCファン」になったわけである。



いや(笑)、私が「ワカってる」XTCファンであるかどうかはどうでもいい。私は私のXTC論とレヴューを放つだけだ。



とっかかりに概観を述べておけば、このアルバムは「聴くべきXTCのアルバム」を挙げる際には5番6番7番手としてしかあがってこない、どっちかというと中途半端な作品、厳しい人には駄作・失敗作とさえ言われかねない作品だ。実際、私自身、このアルバムで捨ておけない曲、折りにふれ聴きたくなる曲は少ない。だがその数曲は、XTCの魅力を如実に伝える強力で欠かせない曲でもある。珍しくヒネリのないかわいらしいラヴ・ソングを歌うアンディ、他バンドの作風をパクりつつもバンド史上屈指のものでもある名曲、1曲だけでブリティッシュ・ポップとは何かを軽々と語り尽くす奇っ怪な傑作曲...と、XTCを語る際にはけっして採りもらしたくない地味な珠玉作がいくつもあるのだ。



そう、この前置きエントリが言わんとすることは、傑作どころかむしろ凡作であるこの『ザ・ビッグ・エクスプレス』においてさえ、XTCはやはりXTCであり、その底知れぬ巨大なポテンシャルはその「爪」で知れ、たまたま行き当たっただけの音楽ファンをも虜にするのに十分なクオリティを持っている、ということだ。私は実際、このアルバムからXTCを知っていったし、(ほぼ)全てを知って振り返ってみてもやはりこのアルバムが好きだ。思い入れたっぷりの各曲詳解は次回に譲るが、もしこの時点で心が動いたあなたには「大丈夫、買って損はない」と言い切れる。





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