アズテク・カメラ「The Bugle Sounds Again」 — 美しい音楽を 限りない歓びを あなたに#3


"The Bugle Sounds Again" Aztec Camera
「ザ・ビューグル・サウンズ・アゲン」 アズテク・カメラ


「The Whole Of The Moon」のようなものすごくビッグなミュージックで50年の古典を物にすることになるマイク・スコットを、当時それほどまでにも感激させ打ちのめしたロディ・フレイムとはどういうソングライターなのかと問うならば、その答えは既にアズテク・カメラの1st.『ハイ・ランド、ハード・レイン』の内にある。時代の潮流の影響を受けてか少しだけファンカ・ラティーナ/シンセ・ポップ/汎ニュー・ウェイヴ・サウンドの風味を持ちつつもこのアルバムの基本線は、しっかりしたソングライター/コンポーザーによりかっちり作られた、3分ポップとよりドラマティックで浪漫的で壮大な抒情チューンの詰め合わせにある。ブリテン流と言うにはずいぶんリリカルでフレッシュな爽やかでまっすぐな青さが香るのはスコットランドのお国柄の為せるわざなのか — そんなことはさておいても、デビュー時からしてのロディ・フレイムの老成・老練っぷりを如実に示し古典的な完成度と独自性を誇る珠玉作をひとつ挙げるなら、オリジナルA面4曲め「The Bugle Sounds Again」を措いて他にない。



ヨタカ/フクロウ、友人同士か恋人同士か — どっちにせよ「同志」であるような2人、安全で落ち着いてて我すべて事もなし、そんな時になぜか「寝惚けてんじゃねーぞ」とばかりに遠くで再び鳴り響くラッパ。まったくもって具体的な事象・状況は描かれることなく、にもかかわらずドラマティックな何かは伝わってくる。それは何より、個人と社会、正義と個人生活、幸福と道徳、パンクとミーイズムとアートの熟達と理想社会への熱情とヒューマニティの完成... 多極のエモーションとセンティメントとヴィジョンの間に板挟みで揺れる、それでいて達観と氷の刃の意志もて動かないロディ・フレイムの強靭さだろう。

 ヴァンパイアどもはぼろ儲けをし、カネでポケットをふくらます
 「誰かが代償を払わなきゃならんものさ」と嘯きながら
 君はそれを見聞きしつつもまだ隠れたままで
 そばに来て一緒に泣こうと唱う
 それで僕は逃げ出す

'83年当時のイギリス社会だろうがその音楽シーンだろうが若者文化風潮だろうが、2010年代のこの日本だろうが、およそ人間社会に生きる者なら誰もが心を激烈に動かされずにはいられない恐るべき一節がミドル・エイトで炸裂する。マイク・スコットのみならず、当時のポール・ウェラー、エルヴィス・コステロ、アンディ・パートリッジでさえ驚嘆と賞賛と羨望を禁じ得なかったであろう詩想・ヴィジョン・叡智・ハードネスが凝縮されている。



イントロ、ヴァース、コーラス、ヴァース、コーラス、ミドル・エイト、ソロ、ラスト・コーラスと、古典的な定型を斬新で奔放な崩しで繰り返し知らずに自在に操り、支える各楽器の小技は緊密に冴え、プロダクション全体が時代を超えてのスタンダード・ソングと謂うに相応しい清新な美しさを驚くほどさらっと提示している。あなたがポップ・ミュージックをもはや必要としないほど満ち足り穏やかになったその時に、このラッパが再び鳴り響きますように。



  


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