冬が来〜ればマッドネす〜#2 — マッドネス『アブソリュートリー』を絶対的にレヴュー


'Absolutely' Madness
『アブソリュートリー』 マッドネス


前回に続いて —
A面2曲め「Embarrassment」で早々と、ファーストでも端々に見せていた名曲メイカーにしてザ・キンクス的なものの後継者っぷりをしっかり大々的に提示し、また「スカ・バンド」に収まらない多彩なバンド・グルーヴの持ち主であることを証明したマッドネスは、A面の終り7曲めまではユーモラスなポップ・ソングと特有の乱痴気風味の(そして少しありきたり気味の)ロックンロールの連続で、むしろ少し早すぎる深夜パーティー気分に突入する。



3. E.R.N.I.E.
マクファーソンとフォアマンの曲。
ヴォーカリストとギタリストによる作(多分にヴォーカリストは詞と歌メロディー)であってもマッドネスのバッキングの基礎文体はキーボード・ギター・ベース・サックス・ドラムが等価かつリード/バックの順列組み合わせ・比重を交互に適宜に、という調子なので、曲によって「これはいかにもギタリストが作った曲」という感じがしない。バッキング/リズム隊というのはマッドネスの場合、キーボードやサックスをも大部分で含むのであり、「E.R.N.I.E.」ではサックスの息の長いリフやピアノ&オルガンの執拗なフレージングがグルーヴ作りにも効いている。「アーニー♪」のバッキング・コーラスや間奏部の語りヴォーカルがヤロウどもパーティー性を付け加えている。

4. Close Escape
トンプソンとフォアマンの曲。
悪ふざけ成分多めの、変態クンの告白コミック・ソングなのだが、マッドネスの奇っ怪にしてプログレッシヴな、身に染み付いたクセや素養とチャレンジ/アイディアが渾然一体となってて「不思議なのにばっちりノレる」というリズム認識・グルーヴ文体がよく表れた、地味ながら快作にして怪作。「大物」になっていく時期・過程こそ異なるものの、私にとってのザ・ジャムとマッドネスは「同期生」であり、直線的、タイト、スピーディー、ドライヴィングなザ・ジャムと並ぶかそれ以上に、マッドネスのルーズ、ポリリズミック、進んでは止まりの、曲線的で重層的でグルーヴィーで折衷的なノリの豊穣は強力な刷り込み源だった。
「Close Escape」では、スッカスカでしかもシャッフルする変格16ビートのスネアが面白いリズムの骨格を作っており、うねんうねんふにゅふにょとファンキーかつユーモラスなベースが不思議グルーヴを付け加える。基本的に「歌モノ」の楽しさや泣かせで高評価されるマッドネスであるが、XTCやガビ・デルガドや...と奥で通底するリズム/グルーヴ探求者としても相当に優秀なのであり、しかもそれを「そこらのあんちゃん達」然としたメンバー各々のグルーヴ・メイキング分業体制によって「天才性」を俟つことなく実現し得ているところに「バンド」としての高価値があるのだ。ドラムのダニエル・"ウッディ"・ウッドゲイトはドラマーとしてどうこう喧伝されることこそ少ないが、アルバムを2回3回通し聴きする際には、そのタイトさと柔らかさ、ジャスト感とタメ感などの多彩な使い分けに注目して聴き直してみてほしい。

5. Not Home Today
マクファーソンとベースのベッドフォードの曲。
スカというよりはレゲエ、それもダブ方向のレゲエのベース・アプローチに大きな影響を受けてそうなマーク・"ベダーズ"・ベッドフォードは、「止め」と細かい符割りを交互に多用する、独特にメロディアスなベース・ラインで「曲を作る」のが身上と言えそうで、ファースト・アルバムの「In The Middle Of The Night 」「Razor Blade Alley」ではそのラインの見事さが、5枚めの『キープ・ムーヴィング』では「One Better Day」の名曲作者っぷりが目立っている。
「Not Home Today」では何だか日本人にも妙に馴染み深くおダサな哀愁風味のイントロが少し残念な気もするが、「隙間を作ってズラして重ねて」型のベースとサックスのリフがやはり濃厚なグルーヴの下支えになっており、「軽めのポップ・ソング」においても侮れない。

6. On the Beat Pete
トンプソンとマッドネス全員名義の曲。
遊び要素、それ以上にマッドネスの文体紹介の感の強いロックンロールで、深夜パーティー性全開。多用されるブレイクと各楽器のミニ・フィーチャリング、芝居がかって早口言葉ライクなおちゃらけた唄、とマッドネスの心情に訴える方向の楽しさが前面に立っているが、同時に、妙にスカスカしててルーズで、バックの濃い/薄いを自在に切り替えながら「隙間の美味しさ」を教えてくれるデッサン曲としても優秀。

7. Solid Gone
チャス・スマッシュことカール、カハル、もしくはケイサル・スミス/スマイスの曲(アイリッシュ系出自に因る)。
「作曲」というよりはフツーの3コード・ロックンロールにチャスの悪のりヴォーカルを乗せただけという感じの、A面パーティーを締めくくるシャレの1曲。
後々スミスはマッドネス内でも有数の名曲メイカーとしてのソングライターに成長するのだが、1、2枚めでは情状によりクレジットやリード・ヴォーカルを貰うダンサー/盛り上げ屋/コーラス要員としての要素が強い。この曲はおやすみリッスン時のいい感じの息抜き/A面エンドと考えといていいクラス。



A面残り5曲を一気にレヴューしたのは気まぐれではなく、ちょうどそのくらいが比重的には妥当だと思うゆえであった。『アブソリュートリー』では(というかファーストに続いてまた?)B面こと8〜14のほうにトピック満載であり、そちらもやはり「スカ・バンド」からはほど遠いのだった。






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