古典を履修し最速でモダンへ — ザ・ジャム『イン・ザ・シティ』をいまさらレヴュー その2


'In The City' The Jam
『イン・ザ・シティ』 ザ・ジャム


威勢のいいパンキッシュなロックンロールで幕開けしたファースト・アルバム『イン・ザ・シティ』は、曲順が進むごとに「パンク」の一言では済まされ得ないザ・ジャムの、2極間で揺れ確信なきままにがむしゃらにあがき進むロック・バンド/モッズ・バンドの姿を、荒削りの単色遣いでながらしっかりと見せてくれる。敬愛する'60年代ブリティッシュ・ビート・バンドの足跡を辿るようないわば「習作」をも試しつつ、そこにはパンク時代の荒ぶる熱い息吹にあてられた優良で熱意あふれるミュージシャンの反射神経と初期衝動が溢れ、パンクであってもパンクに留まらずモッズであってもモッズに留まらない、後のブリテンNo.1バンドへの素養がちゃんと覗くのだ。



3. Slow Down
ザ・ビートルズによるカヴァーでも知られるラリー・ウィリアムズの曲は、当然のごとくテンポ・アップされ、ドラム、ベース、ギターはキッチキチにタイトゥン・アップされ、唾を飛ばしがなり立てるような荒いヴォーカルが牧歌性ノスタルジーを払いのけ、パンク時代にふさわしいロックンロール・スリルを獲得している。ヴァース2の剃刀ギターとノン・コーダルなくっちゃべりヴォーカルには殊に、新参小僧っ子パンクにしてロックンロールの神童たるポール・ウェラーの野生の反射神経が強く感じられる。

4. I Got By In Time  
このアルバムを聴いていた当初も今ひょんなきっかけで引っ張り出す時も、常に私のフェイヴァリットであり続ける地味めながら光るところたっぷりのザ・ジャム・ロックンロールの傑作。パンク期流のスピード感とうるささとタイトさを持ちつつも3連シャッフルによる柔らかで弾むダンサブル性を併せ持ち、間を惜しむようにギッチギチに詰め込んだ歌詞が「基本メロディー」を無化するように自由自在に跳ね回る。唇をゆがめ歯をむき出しにして吐き捨てるようにがなり立てるのが定番のこの当時のウェラーのヴォーカル・スタイルが、どういう錬金術でかこの曲ではびっくりするくらい「ソウルフル」に響く。コーラス部とミドル・エイトで思い出したように入れられるバッキング・コーラスもシャレてて楽しい。モータウン的もしくはスモール・フェイスィズ的なにぎやかでハッピーな音楽的快感を、トリオ編成ギター・バンドとしては驚くほど巧みにかつ自然に具現化している快作。
 
5. Away From The Numbers
デビューからそう間もない内に、対面したピート・タウンジェントと "ザ・フーとザ・ジャムに共通点などほとんどない" と同意し合ったポール・ウェラーは、むしろポール・マッカートニー/ザ・ビートルズ、そしてスティーヴ・マリオット/スモール・フェイスィズこそを音楽的ヒーローとして挙げていた。一聴して「あ、ザ・フーっぽい」と言われるこの必殺の1曲も、むしろスモール・フェイスィズの「All Or Nothing」や「My Mind's Eye」あたりを、も少しくらいは引き合いに出して語られてもいいだろう。
ザ・フーに似ていない、なんてことはもちろんなく、曲構成・ギター遣いはもちろん、モロにキース・ムーン風のド派手なフィル・インを連発するリック・バックラーのドラミングが素晴らしい。
青臭くも鋭く正しいこの曲の宣言は、ファースト・アルバムにして早くもポール・ウェラー/ザ・ジャムの在りようと進みようを予告しているようで、多くの「パンク勢」の威勢のいい怒りの異議申し立てのわめき倒しに比してあまりにも老成した苦虫噛み潰し型のシヴィアで内省的な知力を感じさせる。ウェラーが時折のご乱心にもかかわらず、その後も永らく「オピニオン・リーダー」として若者層から支持・信頼され続けることになる所以が既にここにある。

6. Batman Theme
ザ・フーやザ・キンクスによってモッズ・バンドの腕試しドリルの定番の感のある「バットマンのテーマ」は、さすがのタイト感スピード感で、シャレたA面締めくくり。



軽い小手試し的なパンク/ロックンロール・チューン、リズム&ブルーズ/ソウルの影響を3ピース編成に落とし込む小粋で光る佳曲、コアなロック・バンドの自負をこめたガツンとカマす渾身作、と交互に上々の成果を提示しアルバムは「B面」に進む。


  





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Author:eakum
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