ゴールし途端に次スタートへ — ザ・ジャム『イン・ザ・シティ』をいまさらレヴュー その3


'In The City' The Jam
『イン・ザ・シティ』 ザ・ジャム


ファースト・アルバム『イン・ザ・シティ』にやや難があるとすれば、B面後半に進むにつれ尻すぼみになり、アルバム通しての聴き応えという面でクオリティ的にもヴァラエティ的にもいきなりガクンと落ちるという点だろう。前半3曲がそれぞれにトピカルな美点を持ち合わせた傑作/良曲であるのに対し、後半3曲には、尺合わせの埋め草とは言わないまでも、詰めの甘い(その時点での)過去の習作かやがて来る次なるスタンダードに向かう途上の試行作かと思わせる未完成度が漂う。とは言え、「曲になってない」と言うほどにひどい箸にも棒にもかからないような捨て曲ではなく、むしろセカンド、そしてサードで大々的に花開くことになるよく知られたあのザ・ジャム・スタイルへのスマートならざる試行の跡が垣間見え、ディスコグラフィ上の興味を湧かす。



7.(=B-1.)In The City
ザ・ビートルズやモッズ・バンドやモータウンを愛する少年だったポール・ウェラーだが、そのギター・プレイのスタイルの主たる影響源としてはドクター・フィールグッドのウィルコ・ジョンソンを挙げており、そのリズム/リフ/リードが一体化したスタイルを自作曲に落としこんだ最初の最高の例として、この「In The City」を殊の外誇りに思って嬉しさのあまりバッジまで作っちゃったという傑作。もちろん言うだけあっての傑作コード・リフのイントロだが、それ以上に粒立ち鮮やかなメロディアスかつゴリゴリしたベース・ラインもまたテーマ/リフとして異様なまでにかっこいいのだ。
普通ならA面1曲めに持ってきそうなところをB面まで引っ張っただけあり、'60sにもパンクにも通底するものを持ちつつも、このバンドこの曲にしかないというオリジナルな価値が通時的普遍性と共時的先鋭性の両方にわたってあり、発表から40年近く経とうと常なる新鮮さで新たなリスナーを引っかけ続けるモダン・ロックンロール。

8. Sounds From The Street
意外っちゃ意外、当然っちゃ当然の、ウェラーのザ・ビーチ・ボーイズ/ブライアン・ウィルソンへのリスペクトが捻った形で表れた、不思議な美しさと爽やかさを持つ良作にして意欲作。USAの海とUKのストリートを対照として挙げるというメソッドに、関係ないが後のプリファブ・スプラウト「Cars And Girls」を連想する。
単純素朴ながら美しさ志向のコーラス・ワークとキラキラ感溢れるリード・ギターにこのアルバムでも同時代パンク勢でも異色なリリシズム/ロマンティシズムが香り、後に花開くザ・ジャムの正統ブリテン浪漫カラーが意外なくらい早く強く現れているのが分かる。

9. Non-Stop Dancing
A-4の「I Got By in Time」と並んで私のこのアルバムでのフェイヴァリットであり続ける、ファンキー/グルーヴィー寄り、R&B/ソウル再構築調の快作。ロック・リスナーはその入り始めほど「主食」となる必殺のバンド、必殺の代表曲に惹かれて「ファン」になるものだが、時を経るほどにその必殺性の王道・中心軸がむしろ色褪せていくのを経験するものだろう。対して「横道」「異色作」「捨て置けない佳曲」には、そのバンドのメインならざるポテンシャルが地味にも如実に表れていることがままあり、そういう曲こそが何十年にも及ぶ不朽の地味シブ愛聴曲になる可能性が高い。パンク革命や怒れる硬骨のオピニオン・リーダーというシーン画像を抜きにして観る時、ハッピーでダンサブルでちょい擬古調のロックンロールをカマす際のザ・ジャム/ポール・ウェラーは、トリオのギター・バンドに似合わぬファンクネスをしっかり感じさせ、たとえばスモール・フェイスィズの最高のインスト曲がブッカーT.&ザ・M.G.'sを彷彿とさせるのに似ている。後に白人ギター・ロックのソリッドネスの代表格となるザ・ジャムの、見逃されがちなしなやかさとシャレっけをたっぷり見せる初期のプレシャスな小宝石。

10. Time for Truth
後のカヴァーや実験作を想わせる、ザ・フー風味のトリッキーなギター・ワークを土台にして...と思ったらワヤになりましたってな凡作。

11. Takin' My Love
その当時のウェラーが反発しつつもそれなりに「兄貴分」的に慕っていたらしきジョー・ストラマー/ザ・クラッシュを軽く連想させるスピード感なきアップ・テンポのロックンロール駄曲。

12. Bricks and Mortar
小品にして駄曲ながらセカンド以降に繋がるあのザ・ジャム・スタイルへの胎動が感じられるディスコグラフィ資料。余談だが、ザ・ストーン・ローズィズのイアン・ブラウンはポール・ウェラーに傾倒していたとの由で、なるほどそのファーストもこの曲のようにテンポ・アップしたインスト部でフェイド・アウトしてのシメなのだった。



才能と古典フェイヴァリット承伝と創意と荒ぶりによって輝かしく確かなデビューを飾ったザ・ジャムは、この後次作へ向けて生活・創作両面での迷走・スランプを迎え、奇妙な遅延をセカンド:『ディス・イズ・ザ・モダン・ワールド』で見せることになる。が、そのA面1曲目ではギター、ベース、ドラムが一体となってショック・ブレイクの煽りをカマす周知のあのザ・ジャム・スタイルがあたりまえのような完成度とともに顔を出し、この間の見え難くも確かな創意と飛躍が良ロックンロール・バンドをモダン・ロックの新王朝樹立者へと変える歴史を示唆している。
駄曲を駄曲と吐き捨てるためわざわざ採りあげることの意外な疲労を今回思いがけず味わったところだが、おそらくは懲りずにまたいつかのセカンド評でもやってみよう。


  


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