女性にしてキング、白人にしてソウル — 不世出のエンスージアスト:キャロル・キングの『タペストリー』


'Tapestry' Carole King
『タペストリー』 キャロル・キング


誰もが知ってるロックンロール/リズム&ブルーズの1962年の全米No.1ヒット:「The Loco-Motion」を書いたのは、作詞家のジェリー・ゴフィンと作曲家でピアノ・プレイヤーのキャロル・キングの夫婦チームであった — そして、キャロルのほうが女性なのであり、そのことはロック界における男女コラボレーションの常道に関わる先入観にも軽くパンチを入れてこよう。



ゴフィンとの離婚後の、'71年のキングのセカンド・アルバム『タペストリー』を、当時の流れ上にある「シンガー/ソングライターのアルバム」として食わず嫌いしているロック・ファンがいるとしたら、それはとんでもなくもったいない過ちだ。18才にしてザ・シュレルズの「Will You Love Me Tomorrow」を書いているキングの黒人音楽エンスージアストっぷりは、アルバム1曲目「I Feel The Earth Move」から知れる。ロック・ファンのあなたは聴き始めた途端に、ディープでコアで、エクセントリックかつ正統派の、ブラック・ミュージックのエッセンスを若年から体得した白人女性ミュージシャンの端倪すべからざるソウル魂に舌を巻く。



「I Feel The Earth Move」はとてつもない傑作だ。モータウンの楽屋裏のソングライティング・チームもかくやと想わせる、荒く力強くもプログレッシヴに勘所を押さえたパーカッシヴでグルーヴィーなピアノのイントロで既に身も心も完全にドライヴされる。ソウル・ディーヴァ型というよりはジャニス・ジョプリン型のキングの荒削りで野性的なヴォーカルに、わざとクラシカルなクリシェ・ライクに音質と声質を落としたようなバッキング・コーラスが被さる一瞬一瞬がまた鳥肌ものにかっこいい。激しく奔放に全員がアドリブを加えながらリットまで突き進むたっぷりのラスト・コーラスには凡百の英ブルーズ・ロック勢の及ばぬモノホンの輝きがある。

3曲目「It's Too Late」のイントロの、こってり濃ゆくバイユーの匂いのするようなファンクネスは尋常じゃない。'60年代ブリテンで言えばザ・ゾンビーズやマンフレッド・マンが隠し持つ、ジャズ/ファンクの不穏で不協和なクールの美が香る。と思うや一転、洗練と強引さを併せ持つ素早く高度なコード・チェンジでカタルシス豊かに安泰と解放のコーラスへとなだれこむ。私的な好みの範囲の話になるが、なぜトッド・ラングレンがOKでホール&オーツやビリー・ジョエルじゃNGなのか、その辺りの答えへの手がかりがこういう曲に潜んでいる気がする。

7曲目(B面1曲目)「You've Got A Friend」には白黒問わずのピアノ・バラッドの永遠の王道があるが、ザ・フォー・トップスの「Reach Out I'll Be There」やジャクソン・ファイヴの「I'll Be There」やビル・ウィザーズの「Lean On Me」に通じる、いわば "フレンド・ソング" の黒人音楽の系譜が感じられ、粗野で朴訥なくらいのキングの唱法と相俟って「泣かせ」で済まされないソウルフルネスを獲得している。



前述のザ・シュレルズへの提供曲、及び'67年のアレサ・フランクリンへの提供曲のセルフ・カヴァー2曲を含め、採りあげない他の曲群もまた、インフルエンサーとインフルエンシーが同居し交錯し研磨し合うような、ブラック/ルーツ・ミュージックの幕の内弁当となっており、たとえばクラシカルなブーギーがどのようにモータウンやガール・グループ・サウンドに進化し得るかの舞台裏再実験をのぞき見るような面白みに富む。フェイスィズやゼム/ヴァン・モリソン辺りのルーツ・ミュージック再解釈的アプローチを好むような人ならひと際興味深く聴けることだろう。









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Author:eakum
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