マッドネスのファンクネスとミュージック・ホール伝統:『ザ・ライズ&フォール』


'The Rise & Fall' Madness
『ザ・ライズ&フォール』 マッドネス


一見しての分かりやすい派手さには欠けるかに聞こえる『ザ・ライズ&フォール』は、A面3曲め「Blue Skinned Beast」に続けての2曲:「Primrose Hill」「Mr.Speaker (Gets The Word)」で一気にアルバムの佳境に入る。ジャズ/ブルーズをはじめとする汎黒人音楽に基礎を置かない、ブリティッシュ/イングリッシュなポップのルーツの重要な一翼:「ミュージック・ホール」の伝統に基づくどこか不穏で乱調でどこかノスタルジックなテイストが全面に押し出されたぶっとくのたうつ独特のファンクネスが、わずか6分半強の間ながら濃厚にディープな満腹感を提供してくれる。いわば「イングランド性」「イングランド人気質」を、大小浅深新旧さまざまな方向に手を替え品を替え語り尽くそうというところにあったであろう元々のコンセプト・アルバム構想は、A面5曲めまでは手堅く深く豊かに成功していたと言える。

参照:Music hall - Wikipedia



A-4. Primrose Hill
マクファーソンとフォアマンの曲。
かわいらしいピアノで始まりながら一転、ヴァースに入るや最後まで不穏でニューロティックな擬古調サイケデリアで陰々滅々としたまま終わる不気味な佳曲。軍楽隊風というか大戦間ヨーロッパ風というか、執拗なまでに重ねられたホーン隊&ベースの刻みが非ロック的なグルーヴで悪酔い的な酩酊をもたらす無時代トランス・ミュージックの異色傑作。

A-5. Mr.Speaker (Gets The Word)
マクファーソンとバーソンの曲。
ロンドンの名所「スピーカーズ・コーナー」に象徴されるイングランド気質を戯画的なキャラクター立てでユーモラスに描写した作品。とはいえ、そこにはファーストやセカンドに見られる哀れで滑稽な "オリジナル" たちを茶化したようなコミック・ソングのムードは微小で、むしろどこか自嘲や自戒や逆説の、反骨やシンパシーが香る気がする。前曲を受けてさらに奔放に大胆に展開させたワルツ/マーチ風の非ロック・グルーヴがマッドネス流ファンクネスの頂点に達している。わずか2分59秒のものとは思えない濃密なトランス・トリップ異空間。

A-6. Sunday Morning
ドラムのウッドゲイトの曲。
イングランドのフツーの家庭のフツーの日曜の日常を淡々と描き、そのくせ妙に無機質で不穏で狂気の気配すら漂う奇怪にプリティな実験曲。同工異曲と言うには遥かにでき良くハッピーなB面1曲めのヒット曲「Our House」への捻った繋ぎ、というのも褒め過ぎな、まあ埋め草。ながら、ベースとドラムのパズルじみた断裂グルーヴは妙に快感。



中心軸をブレさせることなく深化と巧緻とヴァラエティで正常進化を遂げたかに見える『ザ・ライズ&フォール』だったが、B面では少しく歩調を崩し、中間部で「息が続かない」式のパワー・ダウンを見せる。熱の入った2エントリでのA面レヴューに続けてにしては、すっ飛ばし気味の次回3エントリめにならざるを得ないだろう。






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