遠慮なくビートルポップにしてやはりXTC節、『オレンジズ&レモンズ』レヴュー その2


'Oranges & Lemons' XTC
『オレンジズ&レモンズ』 XTC 


前回に続いて『オレンジズ&レモンズ』のレヴュー、切りどころに困ってしまうのだが、敢えて恣意的に今回はサイド1の残りをいっとこう。



1-2. Mayor Of Simpleton
アルバム1曲目を実にXTCらしく、なおかつ新生XTCらしいかっ飛ばしで飾った後間髪を容れず、容赦なく遠慮なく躊躇なくぶちかますモロにの完璧なビートルポップにしてXTC流パワー・ポップ。
XTCは、資質・能力的に観れば傑作パワー・ポップを過去にボコボコ作っていても不思議ではないバンドでもありながら、実際には、エクスキューズ抜きにパワー・ポップと言い切って人に紹介できるようなそのものズバリのパワー・ポップはほとんど作っていない。私なら強いて挙げてで「That's Really Super, Super Girl」と「Earn Enough For Us」の2曲を僅かに挙げるに留める。だが、いずれも'87年発表の、ザ・デュークス・オヴ・ストラトスフィア名義での「Vanishing Girl」、アンディ・パートリッジのプロデュースによるザ・ウォールフラワーズの「Thank You」などをも経て、「ヒネリなしに必殺の王道ポップをやって何が悪い?」とばかりにアンディ&XTCにコロンブスの卵的な発想の転換と頓悟が訪れたとしても不思議はない。
敢えてのふわんふわんとしたザ・バーズ風のバッキング・ギター、かわいらしく楽しいサウンド感触を増幅させるハイハット/タンバリンとチャイム系シンセ、と「裏切り呼ばわり」をも怖れないキラキラとブリリアントなサウンドがある意味驚きではあるかもしれないが、歴代でも屈指と言えるほどに凝りに凝ったコリンのベース、これでもかと繰り出されて埋め尽くす百花繚乱のコーラス・ワーク、ポスト・コーラスに顕著なパートリッジ流伝統の息の長い1ライン、と「日和り」「売れ線狙い」には程遠いXTCの正常進化がしっかりある。古参ファンをもやはり唸らせ新参ファンは1発で虜にするフル・スロットルかつ円熟のXTC会心の一撃。

1-3. King For A Day
よく謂われるスティーリー・ダンと言うよりは、その頃親交のあったらしきティアーズ・フォー・フィアーズの某ヒット曲を想わせるコリンの曲。
XTCの魅力、というかXTCに様々なリスナーが各々に見出だす魅力というのは千差万別十人十色だが、このアルバムをこの曲まで聴いてきてギョッとする人は多かろう。フェアネスの担保上言っとけば私はコリンの曲を元からそう高くは評価してない人間ではあったが、先立つ『スカイラーキング』や『ソニック・サンスポット』での充実っぷりからなおさら、この曲のでき自体以上に仕上がり具合やプロダクションの方向性にガックリくる。正直「スティングやフィル・コリンズみたいなのを聴きたくてXTC聴いてんじゃねーぞ?」ってな感じだ。ブリリアントでウェル・メイドで少しくMOR的でカドの取れた — 『オレンジズ&レモンズ』に従来XTCファンから不満があがるとすればその線でのものが多くなろうし、そしてこの曲はそういう代表格だろう。

1-4. Here Comes President Kill Again
ビートルポップへの開き直り以上に英国の童謡/子守唄伝統への意識が如実に薫る、そしてやっぱり正常進化上のXTC流傑作。敢えてのこれでもかの悪ノリなまでのパロディック趣味にかまけて見逃してはならないのは、ミスター・ミスターのパット・マステロットのドラムの確かさと強さで、ドラムとリズムにうるさいアンディを満足させて余りあるこの天佑が『オレンジズ&レモンズ』の好レコーディングを可能にしたのは間違いない。
寓話的で童謡的な仕立てにかかわらず、アンディの歌詞は従前どおり鋭く、この曲ではむしろよりペシミスティック色濃厚に思えるが、怒りと祈りが同居するそのスタイルは健在であり — そしてアルバムの流れ的にサイド2の「The Loving」に見事に繋がるのであった。



 


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