少しく陰る2枚組の難、XTC『オレンジズ&レモンズ』レヴュー その3


'Oranges & Lemons' XTC
『オレンジズ&レモンズ』 XTC 


前々回、前回に続いて『オレンジズ&レモンズ』のレヴュー、サイド2から続けよう。



2-1. The Loving
サイド1で見せた開き直りビートルポップ路線は、「Mayor Of Simpleton」の軽快な楽しさ、「Here Comes President Kill Again」の童謡/寓話性ポップに輪をかけて、モロに大上段からのヒューマン・ラヴ讃歌「The Loving」でさらに炸裂する。が、「愛」でなく「愛すること、愛されること」をタイトルに掲げたところにアンディのアンディらしい正常進化を見ることができる — 「開き直って」とはいってもXTCがXTC流を捨て安易なビートルズ亜流に走ったわけではけっしてない。弱き者と強き者、貴き者と低き者、猛き者と優しき者の対照を中心に、古典的な汎ヨーロピアン表象が広くのぞく怒濤の修辞で、過去作「Beating Of Hearts」やザ・ウォーターボーイズ「The Whole Of The Moon」にも通じるパノラミックな壮大さが薫る。憎しみや怒りや恐れや餓えを源とする力の軍勢に「愛すること」という無限の兵力が対抗するのだ。
サウンド的にも、XTC中期伝統の威風堂々ドライヴにザ・デュークスやザ・スリー・ワイズ・メンのサイケ性とファンタスティック性までトッピングされ大盤振る舞いのポップ御馳走となっている。

2-2. Poor Skeleton Steps Out
『オレンジズ&レモンズ』以前のXTCのアルバムで、2枚組の作品は『イングリッシュ・セトルメント』だけである。たまたまかそちらも同じく15曲入りで、それゆえアルバムの流れが「いいところ」で中断/宙吊りとなるきらいもなくはない。
まるでその『セトルメント』からしばし続いた汎地球型トライバル・グルーヴ探求熱が再発したかのような風を見せるこの「Poor Skeleton Steps Out」、そして1つ飛んでの「Scarecrow People」で、サイド2は少しく統一感あるリスニング快感を損なうものとなっている。敢えて頑張っての詳解はやめておこう。

2-3. One Of The Millions
(実はそう珍しいことでもないものの)このアルバムでは3曲のみに留まるコリン作品の2つめは、サイド1の「King For A Day」と打って変わって、地味ながら捨て置けない好品。
コリンの、作曲術と切り離しようのない作詞術の主たる一面として、短文の積み重ねによる戯画化があると言ってよく、それはたとえばXTCの最初のヒット曲となった「Making Plans For Nigel」やザ・キンクス調の傑作「The Affiliated」に最良の形で表れている。が、その分コリンは、アンディに比べればストレートに自身の主張を詞に表すことの少ない作詞者であるとも言えるだろう。
このアルバムでのコリンはかつてなかったほどに「ソウルフル」に感情や主張を詞・ヴォーカルにこめ、たまたまペシミスティックかつ「XTCらしくない」出来上がりになっている感もあるが、ソングライターの成熟した真っ向勝負っぷりゆえにそれだけでも価値を持つ良曲に結実しており、アルバムのコンセプトや流れにかかわらず胸を打つ。これまた『セトルメント』流の静謐かつ精緻なトラッド再発明ふうのグルーヴも酔わせる。

2-4. Scarecrow People
L.A.録音の日々がアンディの汎グローバル・グルーヴ探求熱に火を点けたか、ウェスタン/アメリカーノ実験風味の奇天烈ポップ。これまた詳解は省くが、『セトルメント』の奇天烈チューンのほうがナンボもマシな面白みがあるとは言っておこう。



少しく焦点のぼやけたサイド2には、XTCのファンであればあるほどむしろ「出鼻をくじかれる」思いに駆られる感も否めないが、サイド3ではしっかり調子を取り戻すことになる。


 


にほんブログ村 音楽ブログ 洋楽へ  
にほんブログ村




 プライバシー ポリシー

コメント

プロファイル
eakum の音楽レヴュー
Author:eakum
スポンサード リンク






アーカイヴ

全過去記事のタイトル一覧