白亜の丘で大団円、XTC『オレンジズ&レモンズ』レヴュー その5


'Oranges & Lemons' XTC
『オレンジズ&レモンズ』 XTC


私はそれを聴いたことはおろか、見かけたことすらないのだが、XTCの傑作2枚組アルバム『イングリッシュ・セトルメント』には、アメリカをはじめ世界各国でリリースされた、5曲を端折ってLP1枚にした版があったという。あり得ないほど言語道断な判断ミスだと感じるが、この『オレンジズ&レモンズ』に関して言うならば、なるほどなんなら4曲ほどを弾いて密な1枚にしたアルバムもなくはないな、と思えなくもない。もちろん、バンド側の意向や思い入れを鑑みれば、そしてまた曲調や試行のヴァラエティを思えば、「良曲」だけを集めて他を切り落としたアルバムというのもまたどこか味気なく深みに欠けるものになるのではあろうが。



そんなイフ話を考えてしまうのは、私にとってはサイド2とサイド4のもやもやっとする物足りなさ、ノってきたぞというところで流れが中断される感じからだ。サイド4では中間の2曲 — 「Pink Thing」と「Miniature Sun」がもやもやの素で、総収録時間と曲ごとの長さ、サイドの割り振りからも、ホントにこの曲数と4面が必要でベスト選択だったのかというないものねだりの疑問が残ってしまう。いきおいレヴューも端折り気味となるので悪しからず。



4-1. Hold Me My Daddy
成熟した父親としてのアンディ・パートリッジの「告白」がユニヴァーサルに敷衍されて感動を喚ぶ傑作。アンディがここまでパーソナルな葛藤とその超克を露わに詞に表した前例はついぞなく、それがまた個人の特殊例に留まることなく普遍的な価値を獲得し得ているのが素晴らしい。硬質・重厚な伝統XTCソリッド・ギター・ロックが驚くほど豊かに優しく温かく響き、このアルバムでのビートルポップ路線の白眉にして集大成ともなっている。
カリビアン、とりわけカリプソ風味がだまし絵的にインサートされ、カリフォルニアのラジオ事情も思いがけずこのアルバム製作のポジティヴ・ムードに一役買ったかなどと想像させられる。

4-2. Pink Thing
続けてカリビアン風味色濃い、実験的かつハッピーなかわいらしい曲、のはずだが私には堪えられない異色ポップ。ハッとするほどに清新なポップネスが立ち現れそうになっては虚しく消え去り、正直ヒネり過ぎ欲張り過ぎでは、と思うのだ。

4-3. Miniature Sun
『ザ・ビッグ・エクスプレス』辺りで聴いたような、プログレあるいはモダン・ジャズ風の何かにちょっぴりザ・ビーチ・ボーイズを添えて。

4-4. Chalkhills And Children
かと思えば、そのモダン・ジャズ、及び/もしくはミニマル・ミュージック、室内楽辺りへのアンディの趣味・試行が地味めにも効果的に結実した静謐な傑作でアルバムは幕を閉じる。再び三たびのイングランドと日常性への愛の信仰告白が子守唄的な穏やかさで謳われ、アメリカ西海岸旅行は懐かしき白亜の丘への帰着で終わるのだった。



以前にも述べたが、このアルバム以降のXTCについて私は語るべきことをほとんど持たない。その「成熟」は私にはありがたくない方向へ花開いてゆき、したがって以後のこのブログでのXTCアルバム・レヴューは遡っての3、4枚を残すのみとなる。


 


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