クラブ・ミュージック隆盛の隠れた立役者、『ジョー・ジャクソンズ・ジャンピン・ジャイヴ』


‘Joe Jackson’s Jumpin' Jive’ Joe Jackson(’s Jumpin' Jive)
『ジョー・ジャクソンズ・ジャンピン・ジャイヴ』 ジョー・ジャクソン(ズ・ジャンピン・ジャイヴ)


ジョー・ジャクソンという人は、ある意味では忘れられた昔の大物として、ある意味ではパンク/NW期からの地味ながらの法燈として、熱狂的にではないながらも強くリスペクトされブリテン音楽ファンの心に残り続けるちょっと他に例のないタイプのミュージシャンだ。その作る音楽の変遷は彼のその時その時の音楽的興味の変遷に自然に沿ったもので、それゆえ驚くほど多岐に亘り、しかも一貫性に欠けた根無し草のそれに見えなくもない極端な振り幅を持つ。実情としては、王立音楽アカデミーに学んだほどのピアニスト/作曲家でもあるがゆえにやろうと思えばどんな音楽でも自在にやれる力量を持つミュージシャンが、自分の音楽的ルーツと時代の潮流とちょっとひねくれた反骨心の間のどこかにあるバランス焦点からえいやっと短期集中で生み出したのがその時々のジョー・ジャクソンの作品だ、と言えるだろう。



大筋で初期のエルヴィス・コステロと共通する、パンキッシュなロックンロール/リズム&ブルーズで'70年代末に狼煙を上げたジョー・ジャクソンは、これまたコステロと似て、音楽的にはパンク/NW勢では異色なくらいに有能エリートでかつ幅広いポップ・ミュージックへの嗜好と素養を持つ人だった。3枚のアルバムを出した後にパンク疲れか業界疲れかで療養生活に入った際、彼の心を慰め活気づけたのは、親父さんもしくはその世代が楽しんだロックンロール以前、なんなら「リズム&ブルーズ」以前の前駆体でジャズ/ブルーズの混合体:ジャイヴ/ジャンプ・ブルーズだった。



'60年代のブリティッシュ・ビート・バンドの連中自身ですら幼少時に聴くともなしに聴いたか、やがて親父たちの聴いてた古臭い懐メロとして掃き捨てるかしたであろう前史的リズム&ブルーズ、前史的ロックンロールであるジャイヴ/ジャンプ・ブルーズを、ひねくれ音楽求道者ジョー・ジャクソンは比類なきなりきり再現力で実にモダンに蘇らせる。そこにあるシャッフルと4ビートはオリジナルのそれとはかけ離れて速くタイトでNW流にダイナミックだが、その野卑で素朴で無邪気な酒場ムードとダンサブルさは1981年当時のパンク/NWシーンの血気と殺伐から遠く離れてノスタルジックでリラクシングであり、怒りの時代の袋小路を早々と抜け出したような開放感に満ちている。ほとんどが'40年代のヒット曲に収まる12曲は、3曲がキャブ・キャロウェイ、7曲がルイ・ジョーダンというその途の人懐っこき大家2人のレパートリーからで、ウォームでホットで野卑で庶民的な ”もうひとつのジャズ” の短命な黄金時代を幻視させてくれる。



キング・プレジャーのA-1「Jumpin' With Symphony Sid」、ルイ・ジョーダンのA-2「Jack, You're Dead」A-6「Five Guys Named Moe」B-2「You Run Your Mouth (And I'll Run My Business)」B-4「You're My Meat」B-6「How Long Must I Wait For You」、キャブ・キャロウェイのA-4「We The Cats (Shall Hep Ya)」B-1「Jumpin' Jive」はアップ・テンポの前史的ロックンロール/ポップ・チューンで、パンク期にあってパンクとはまた別のスピード感とスリルを提示してくれている。殊に両面ラストに配置された「Five Guys Named Moe」と「How Long Must I Wait For You」はジョー・ジャクソンズ・ジャンピン・ジャイヴによって異常にタイトゥン・アップされ、言葉遊びの数え歌流の歌詞とも相まってザ・ダムドにも劣らぬけたたましい怒涛の疾走感を生んでいる。

流れ的にちょうどよく挟まれるミドル/スローの酔いどれ享楽はったりソングも粒ぞろいで、ジョーダンのA-3「Is You Is Or Is You Ain't My Baby」B-3「What's The Use Of Getting Sober (When You're Gonna Get Drunk Again)」、キャロウェイのA-5「San Francisco Fan」グレン・ミラー他の「Tuxedo Junction」はいずれも ”旧き良き時代” 風の酒場とショウと嬌声の香りがたっぷりだ。実際にはもちろん、あのルイ・アームストロングの「痛み止め」発言でも知れるようにいにしえの黒人ミュージシャンたちが幸福で栄誉ある満ち足りた生活を送れていたわけではないが、ジョー・ジャクソンがこれらの音楽の背景まで含めてのリスペクトとオマージュをこめているのは想像に難くない。マッドネスやザ・キンクスのファンならより一層の愛着とデジャ・ヴュを感じられるであろう前史的3連リズム&ブルーズの逸品たち。



デューク・エリントンのホットで粘っこく野卑な部分はキャブ・キャロウェイに大きく受け継がれ、その直系にあるルイ・ジョーダンはジュークボックスの王となりロックンロールの叔父となる。げに世にファンクネスの種は尽きまじ。ジョー・ジャクソンから手ほどきを受けた人は、まずはルイ・ジョーダンを掘っていくといい。「オリジナル」に拘らずとも数あるベスト盤からその幅広い楽しさは知れるから。


 


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