ジ・アイスィクル・ワークス「Birds Fly (Whisper To A Scream) 」 — 美しい音楽を 限りない歓びを あなたに#8


“Birds Fly (Whisper To A Scream) “ The Icicle Works
「バーズ・フライ(ウィスパー・トゥ・ア・スクリーム)」 ジ・アイスィクル・ワークス


実際にはドラム・マシンの名ではなかったエコー&ザ・バニーメンの「エコー」は、それでもある意味彼らの音楽性やイメージを象徴するのにぴったりな単語だ。バニーメン自身のアルバム・ジャケットやPVにもそのこだまが随分長いこと反響し続けていたように。そして彼らからのインスピレーションを受け継ぐ後発バンドにもまた、夜や森や木霊のイメジャリーにティーン・アンクストや内省や決意を象徴させる一種の流行りがあった。ジ・アイスィクル・ワークスの「Birds Fly (Whisper To A Scream) 」などは、音楽・PVともにその成功した代表例だと言える。



ブルンディ・ドラムというよりはアダム&ジ・アンツを彷彿とさせる擬似土俗ドラムに高音で美しく歌うベース、バニーメンとアズテク・カメラの控え目ないいとこ取りのようなリヴァービーなギター・サウンド・アンビエンス。ニュー・ウェイヴのかっこよさと美しさがコンパクトに凝縮されている。だが、それだけの突発的後発組優等生ラッキー・ヒットならU2やスティングがもっと上手く大きく飛ばすだろう。”80’s狂い” の若きアメリカ人の、TVドラマで流れるのを聴いた若きアメリカ人の、遅まきながらのユー・チューブ詣でが後を絶たないのは、その歌詞にタイムレスな美と真実があるからだろう。

 永遠に時間がかかる物事もある
 でも信頼と愛の煉瓦を積むことで
 山ですら動かすことができる

イントロの女声による語りが早々と予告しているテーマは、われわれ人類の果てなき、懲りない愚かさだ。クリスチャニズムとブッディズムの青くも微笑ましいアマルガムから時にスピリチュアルな猛りの覗くイアン・マクナブのやんちゃに荒ぶる若気が、謎めき抑えも効いた象徴詩に瑞々しい祈りの風味を加えている。ロディ・フレイムやマイク・スコットならもっと鋭くもっと雄大に語れそうな希求の声だが、ここではニュー・ウェイヴィーなサウンド異空間がシンプルな歌詞にオラクルめいた深遠な美しさと説得力をまとわせてくれている。革命の熱病と自壊と内省の後の再生への意志が、ブラック・ミュージック再履修再解釈再挑戦の波とはまた別の、時代のロック美を生んでいる。



橋下徹はまちがっている、安倍晋三はまちがっている、ドナルド・トランプはまちがっている、そしてもちろん、それらを選びそれらを養い育ててしまうわれわれ自身がまちがっている ー そういうささやき声が大きな叫びになるのは、いつも難しくいつも遅すぎる。「Whisper To A Scream」を聴く者がその受けた感動にふさわしい思考と言動を取ろうというのなら、「そばに来て一緒に泣こうと唱」っていてはならないのだ。美しい音楽はその意匠が古びてもなお、人の心を揺さぶり続ける。


  


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